製造現場における品質と生産性の向上は、常に追求されるべき重要なテーマです。特に、2種類の液体を精密に混合して塗布する工程では、その混合比のわずかなズレが製品の品質を大きく左右しかねません。本記事では、そのような課題を解決する「2液混合ディスペンサー」に焦点を当て、その基礎知識から、混合比がズレないための選定ポイントまでを、技術コンサルタントの視点から詳しく解説します。
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2液混合ディスペンサーとは?
2液混合ディスペンサーは、主剤と硬化剤のように、2つの異なる液体を定められた比率で正確に混合し、定量吐出する装置です。自動車業界における部品の接着や、電子部品のポッティング(樹脂充填による保護)、さらには医療機器や医薬品、食品製造など、その用途は多岐にわたります。手作業での混合に比べ、品質のばらつきをなくし、安定した生産を実現するために不可欠な設備と言えるでしょう。
なぜ混合比の精度が重要なのか?
混合比の精度がなぜこれほどまでに重要視されるのでしょうか。それは、混合比のズレが「硬化不良」という致命的な問題を引き起こすからです。例えば、接着剤の硬化が不完全であれば、製品の耐久性に深刻な影響を及ぼします。また、ポッティング材が完全に硬化しなければ、電子回路を湿気や衝撃から保護するという本来の役割を果たせません。このように、混合比の精度は、製品の信頼性そのものを担保する上で、極めて重要な要素なのです。
実際に、混合比不良を放置すると、硬化不良によって接着力が低下し、ワークの剥離や内部破損が発生します。特に電子部品の封止では、絶縁不良や熱サイクルでのクラックといった重大な品質問題に直結するため、生産ラインでは不良率の増加による手戻り、工程停止、ロット廃棄などの直接損失が発生してしまいます。
混合比がズレないための3つの選定ポイント
では、混合比のズレを防ぎ、常に安定した品質を保つためには、どのようなディスペンサーを選定すれば良いのでしょうか。ここでは、3つの重要なポイントを解説します。
1. 吐出方式で選ぶ
ディスペンサーの心臓部とも言えるのが吐出方式です。高精度な混合比を実現するためには、液体の粘度変化に影響されにくい容積計量方式が推奨されます。この方式は、シリンダーやポンプを用いて、液体の「体積」を正確に計量するため、温度変化などによる粘度の変動に左右されにくいという大きなメリットがあります。特に、精密な塗布が求められる用途では、この方式の採用が成功の鍵となります。
一方、時間と圧力で吐出量を制御する方式は、シンプルで安価というメリットがある反面、粘度変化の影響を受けやすいため、精度が求められる用途には不向きです。以下の表は、主要な吐出方式の特性を比較したものです。
| 吐出方式 | メリット | デメリット | 適用場面 |
|---|---|---|---|
| 容積計量方式 | 高精度、粘度変化に強い | 構造が複雑、比較的高価 | 電子部品、精密機械 |
| 時間・圧力制御方式 | シンプル、安価 | 粘度変化の影響を受けやすい | 大量生産、低精度でよい用途 |
2. ミキサーの種類で選ぶ
2つの液体を均一に混ぜ合わせるミキサーも、重要な選定ポイントです。ミキサーには、内部のエレメントで液体を分割・合流させて混合するスタティックミキサーと、モーターで攪拌羽根を回転させて強制的に混合するダイナミックミキサーの2種類があります。
スタティックミキサーは駆動部がないため、メンテナンスが不要で、導入コストも低いというメリットがあります。しかし、粘度差の小さい材料や、混合比が比較的均等な場合に限定されます。一方、ダイナミックミキサーは、粘度差が大きい材料や、混合比が極端に異なる材料(例:100:5など)を扱う場合に必須となります。モーター駆動により強制的に混合するため、複雑な材料でも均一な混合が実現でき、より高い品質を保証できるのです。
材料の特性を十分に理解し、最適なミキサーを選定することが、均一な混合を実現する上で不可欠です。
3. 制御機能で選ぶ
最新のディスペンサーには、混合比を安定させるための高度な制御機能が搭載されています。例えば、流量センサーからのフィードバックに基づき、吐出量をリアルタイムで自動補正する機能や、液体の圧力を常に監視し、異常を検知する機能などです。2026年現在のトレンドとしては、これらの機能に加えて、IoT技術を活用して遠隔監視や予知保全を可能にする製品も登場しています。これにより、生産ラインのさらなる安定稼働と効率化が期待できます。
【2026年最新】注目メーカーと製品動向
2025年12月の調査 [3] によると、市場では高精度な吐出を実現するメーカーが注目を集めています。特に、株式会社サンエイテックは、±1%以内の超定量吐出を誇る「eco-DUO600」や、ダイナミックミキサーを搭載した「eco-DUOMIX」などで高いシェアを獲得しています。また、日本ソセー工業株式会社や株式会社日本省力技術研究所なども、独自の技術で高精度な製品を提供しており、市場での存在感を高めています。
さらに、ナカリキッドコントロール株式会社は、放熱用ギャップフィラーなど特殊な液体材料の混合吐出プロセスを最適化した製品ラインアップで知られており、特に精密な混合吐出が求められる電子部品製造業界で高く評価されています。
近年の技術トレンドとしては、さらなる高精度化はもちろんのこと、メンテナンス性の向上や、人手不足に対応するための自動洗浄機能などが挙げられます。これらの付加価値が、今後の製品選定において重要な判断基準となるでしょう。
導入事例から学ぶ成功のポイント
自動車部品業界では、2液混合ディスペンサーの導入により、品質向上と生産性向上を両立させた成功事例が数多く報告されています。ある事例では、電子基板へのポッティング工程において、真空環境下で吐出できるディスペンサーを導入することで、気泡の混入を完全に防ぎ、製品の信頼性を飛躍的に向上させました。
導入メリットとしては、以下の点が挙げられます。
品質の安定化・向上:混合比率や吐出量の高精度制御により、製品ごとのばらつきを防止し、不良率の低減や信頼性向上に直結します。
生産効率アップ:自動化による作業時間短縮や、複数部品への同時塗布などで生産タクトが大幅に向上します。
安全性の確保:樹脂など有害な液体への直接接触を避けられ、作業者の健康リスクも低減します。
コスト削減:材料ロスや不良品発生の抑制、メンテナンスフリー設計による保守コスト削減など、トータルコストの最適化が図れます。
この成功のポイントは、単に高精度なディスペンサーを導入するだけでなく、製造プロセス全体の課題を深く理解し、最適なソリューションを選定した点にあります。
まとめ
2液混合ディスペンサーは、現代の製造業において、品質と生産性を両立させるためのキーテクノロジーです。混合比のズレを防ぎ、常に安定した製品を生み出すためには、吐出方式、ミキサーの種類、そして制御機能という3つのポイントを総合的に評価し、自社の材料やプロセスに最適な一台を選定することが不可欠です。
本記事で解説した内容が、皆様の設備選定の一助となれば幸いです。より詳細な情報が必要な場合は、各メーカーに問い合わせ、デモなどを通じて実際の性能を確認することをお勧めします。
執筆者
田中 太郎
製造業向けシステムエンジニア・技術コンサルタント。15年の産業機械・自動化システム導入経験を活かし、製造現場の課題解決を支援。精密機械、自動化システム、品質管理を専門分野とし、実務経験に基づいた実践的なコンサルティングを提供している。