こんにちは、キャリアアドバイザーの片桐亮介です。
住宅用の太陽光発電や蓄電池を売る営業を8年続けたあと、人材紹介会社に移りました。
いまは環境・エネルギー業界や住宅設備業界への転職をお手伝いして7年になります。
先日、面談でこんな質問を受けました。
「求人票の福利厚生に『リファラル採用制度 報奨金20万円』と書いてあるんですけど、これって高いんですか」
聞かれてみると、比べる物差しがなければ判断しにくい数字です。
そこでこの記事では、公表されている調査データをもとに、報奨金の相場と会社側の採用コストを並べてみました。
後半では、実際に20万円を掲げている中小企業の例も取り上げます。
紹介されて応募を考えている人にも、社員として紹介を頼まれている人にも、判断の材料になればうれしいです。
Contents
リファラル採用と報奨金のしくみ
リファラル採用は、社員が友人や知人を自分の会社に紹介する採用方法です。
紹介した人が入社すると、紹介した社員に会社から報奨金が出る、という形がよくあります。
東京商工リサーチが2026年6月に行い、6,475社から回答を得た調査では、リファラル採用を取り入れている企業は49.2%でした。
大企業では60.4%、中小企業でも48.3%にのぼります。
私が太陽光の営業をしていたころも、勤め先には社員紹介の制度がありました。
当時はまだ「縁故採用」と呼ぶ人のほうが多かった気がします。
それがいまでは、半数の企業が取り入れる一般的な採用手段になっています。
報奨金は「給料」として支払われる
あまり知られていませんが、報奨金の払い方には法律のルールがあります。
職業安定法の第40条は、募集に関わった社員に対して、賃金や給料などとして支払う場合を除き、報酬を与えてはならないと定めています。
そのため、多くの会社は就業規則や賃金規程に紹介制度を書き込み、手当として給与と一緒に支払っています。
求人票でよく見かける「※規定あり」という注記も、こうした社内規程を指していることが多いはずです。
給与として支払われる以上、所得税の源泉徴収の対象になるのが一般的です。
20万円がまるごと手元に残るわけではない点は、頭に入れておいてください。
支給のタイミングも会社によって違います。
入社時にまとめて払う会社もあれば、入社から3か月後や6か月後に払う会社もあります。
一定期間の在籍を支給の条件にしている例もよく見かけます。
社外の友人に謝礼を渡すのは別の話
同じ法律の第36条では、自社の社員以外の人に報酬を払って募集を手伝ってもらうには、厚生労働大臣の許可が必要とされています。
「社員ではない知り合いが人を紹介してくれたから、お礼に現金を渡す」という形は、リファラル採用の報奨金とは扱いが違います。
社員が紹介し、社員が報奨金を受け取る。
リファラル採用の報奨金は、この形を前提にした仕組みだと考えておくと混乱しません。
報奨金の相場はどのくらいか
では本題の金額です。
先ほどの東京商工リサーチの調査では、リファラル採用を取り入れている企業に「紹介した従業員に最大いくら払うか」を聞いています。
中小企業2,823社の回答を抜き出すと、次のとおりです。
| 報奨金の上限額(1人あたり) | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1〜10万円未満 | 566社 | 20.04% |
| 10万〜20万円未満 | 266社 | 9.42% |
| 20万〜30万円未満 | 120社 | 4.25% |
| 30万〜40万円未満 | 32社 | 1.13% |
| 40万〜50万円未満 | 17社 | 0.60% |
| 50万〜100万円未満 | 26社 | 0.92% |
| 100万円以上 | 26社 | 0.92% |
| 報酬は支払っていない | 1,173社 | 41.55% |
| 明確な規定はない | 597社 | 21.14% |
いちばん多いのは「報酬は支払っていない」で、4割を超えています。
リファラル採用を取り入れていても、金額を決めて報奨金を出している中小企業は4割に届きません。
金額を決めている1,053社だけで計算し直すと、10万円未満が約54%、20万円以上は約21%でした。
つまり20万円は、報奨金を出している中小企業の中で上位2割ほどに入る金額です。
人材系企業のTalentXが2026年9月に公表したレポートでも、紹介報酬の平均は約12.2万円、中央値は10万円でした。
調査元が違っても、「10万円前後が中心で、20万円は高めの部類」という傾向は同じです。
同じレポートには、報奨金の金額と、実際に友人を紹介した社員の割合には明確な相関が見られなかった、という結果も載っています。
金額が大きければ紹介が増える、という単純な話ではないようです。
会社から見ると、20万円は割安な採用費
ただし、この20万円を会社の財布から見ると、印象はかなり変わります。
マイナビの中途採用状況調査2026年版によると、2025年に企業が中途採用に使った費用は1社あたり平均609.9万円でした。
同じ調査で平均の採用人数は12.3人なので、単純に割ると1人あたり約50万円になります。
採用の手段ごとに並べると、差がはっきりします。
| 採用の手段 | 1人採用するまでの費用の目安 |
|---|---|
| 人材紹介会社 | 年収の約30%(年収400万円なら約120万円) |
| 転職サイトの求人広告 | 採用1人あたり平均36.7万円 |
| リファラル採用(報奨金20万円の場合) | 20万円と社内の手間 |
人材紹介の「年収の約30%」は、マイナビの調査票で使われている定義です。
年収400万円の人を人材紹介会社経由で採用すると、報奨金20万円のおよそ6倍の費用がかかる計算になります。
社員にとって20万円は大きな金額ですが、会社にとっては比較的安く人を採れる方法です。
報奨金を手厚くしても、会社側の負担はそれほど重くなりません。
定着しやすいという評価もある
費用のほかに、入社後の定着を評価する声もあります。
東京商工リサーチの同じ調査で「従業員の定着率が最も高い採用方法」を聞いたところ、「いずれも大差ない」を除くと、リファラル採用が18.5%で最も多い回答でした。
転職エージェントからの紹介は5.4%にとどまっています。
社員が「この人ならうちに合う」と考えて声をかけるぶん、入社後のギャップは小さくなりやすいのでしょう。
面談をしていても、知人の紹介で入社した人は、職場の雰囲気を具体的に知ったうえで決めていることが多いと感じます。
電気工事の分野はとくに人が採りにくい
私が担当している環境・エネルギー業界に引き寄せると、事情はさらに切実です。
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分)の参考統計表で、パートを含む常用の有効求人倍率を職業別に見ると、職業全体の1.05倍に対して電気工事従事者は3.26倍でした。
求職者1人に対して3件以上の求人がある状態で、求人を出して待つだけでは人が集まりにくくなっています。
こうした業界で報奨金を手厚くし、社員のつながりから人を探すのは、理にかなった方法です。
エスコシステムズの報奨金20万円を読み解く
ここからは、実際に20万円を掲げている会社の例を見ていきます。
株式会社エスコシステムズは、東京・勝どきに本社を置く会社です。
住宅向けに、太陽光発電や蓄電池、エコキュートなどの提案と施工を手がけています。
公式サイトによると、従業員は89名(2025年9月現在)です。
過去の求人では10万円だった
マイナビ転職に載っている同社の求人を見ると、2026年9月8日に更新された現行の求人では「リファラル採用制度 ★報奨金20万円支給※規定あり」となっています。
一方、2025年に掲載された事務職の求人2本では、同じ欄が「報奨金10万円支給」でした。
いつ、どういう理由で金額が変わったのかは公表されていません。
ただ、現行の求人は「採用体制の強化に伴う増員募集」として人事・採用スタッフを募っています。
上司インタビューにも「現在は人事部の立ち上げフェーズ」とあり、採用に力を入れている時期であることは読み取れます。
報奨金を倍にするのは、社員に「いい人がいたら紹介してほしい」と伝えるわかりやすいメッセージです。
先ほどの相場に当てはめると、中小企業の上位2割に入る金額でもあります。
報奨金以外の制度もあわせて見る
面談で私がいつもお伝えしているのは、報奨金の額だけで会社を判断しないでほしいということです。
エスコシステムズの場合、ほかにも次のような制度が公表されています。
- 資格取得支援制度(報奨金、資格手当、特別休暇など)
- 企業型確定拠出年金
- 東急ハーヴェストのリゾート会員権
- 結婚祝い金、出産祝い金
- 転勤なし(公式採用サイトのよくある質問より)
資格を取ると報奨金や手当が出る仕組みは、電気工事の資格が仕事に直結する業界らしい制度です。
会社の概要や福利厚生の一覧は、マイナビ転職に掲載されているエスコシステムズの企業情報ページにまとまっています。
また、公式採用サイトのよくある質問には、営業職は基本的に土日祝が出勤で、家族の行事などがあれば上長と相談して休める、と書かれています。
紹介する側もされる側も、こうした働き方の前提を先に共有しておくと、入社後の食い違いを防げます。
なお、報奨金の支給条件(在籍期間など)は公開されていません。
気になる人は、面接や紹介してくれた社員に確認してみてください。
紹介する人・される人が確かめておきたいこと
最後に、立場ごとの確認ポイントをまとめておきます。
紹介されて応募する人
- 給与や休日などの条件を、紹介者の話だけでなく求人票でも確かめる
- 入社後に紹介者と同じ部署になるのかを聞いておく
- 選考を辞退しても、紹介者に不利益がないかを確かめる
- 紹介者の報奨金を理由に入社を決めない
面接で紹介者との関係を確かめるなら、次のような聞き方が使えます。
「〇〇さんからご紹介いただきました。入社した場合、〇〇さんと同じ部署で働くことになるのでしょうか」
いちばん避けたいのは、「紹介してもらった手前、断れない」という理由で入社を決めてしまうことです。
条件に納得してから入社するほうが、結果として紹介者との関係も長く続きます。
紹介を頼まれた社員
- 報奨金の支給時期(入社時か、一定期間の在籍後か)
- 給与として支払われ、税金が差し引かれるか
- 紹介した人が不採用だった場合や、早く辞めた場合の扱い
人事の担当者に確認するときは、こう聞くと話が早いです。
「知人に声をかけてみようと思っています。紹介制度の報奨金が、いつ、どんな条件で支給されるのか教えていただけますか」
条件を先に知っておけば、知人にも正確に説明できます。
パーソルキャリアが2019年12月に20〜30代の正社員を対象に行った調査では、友人を紹介するときに心配なこととして「選考で落ちたら気まずい」が32.6%、「会社に合うか不安」が30.2%でした。
紹介する側が気をつかうのは、昔もいまも変わらないようです。
報奨金が20万円あっても、無理に誘う必要はありません。
仕事内容や働き方をそのまま伝え、相手が「受けてみたい」と言ったら紹介する。
私はそれくらいの距離感がちょうどいいと考えています。
まとめ
報奨金20万円は高いのか、という最初の質問に対する私の答えは「社員にとっては高め、会社にとっては割安」です。
- 報奨金を出している中小企業では10万円未満が半数を超え、20万円は上位2割ほど
- 人材紹介や求人広告と比べると、会社にとって20万円は安い採用費
- 報奨金は給与として支払うのが法律上のルールで、税金もかかるのが一般的
- 金額が高いのは、社員の紹介による採用に会社が力を入れているサイン
求人票でこの数字を見かけたら、ほかの制度や働き方と並べて眺めてみてください。
その会社がどんな人に来てほしいのか、少し見えてくるはずです。